立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花
美しい女性を例えた諺です。
着物姿になった時、いつも以上にこの諺を意識してみましょう。
ちょっとした所作を意識することで、着物姿はよりきれいに、より上品に見えます。
着物は、着ているだけでも視線を集めるものなので、一挙手一投足が注目されてしまうこともしばしばあります。お気に入りの着物を着て出かけるときには、着物を纏う事で、はんなりとして自然と仕草がおしとやかになり、帯でしっかり背筋が伸びてきます。諺通り、着物姿には花のような艶やかさがあります。そんな姿をより一層素敵にする為の、着物の基本的な所作と立ち居振る舞いをご紹介します。
立ち姿
つま先は軽くハの字に揃えてください。上からまっすぐ吊られているように背筋をピンと伸ばし、つま先が開かないよう腹筋をしっかり使い、体の中心に力を入れて内股を意識して立ちます。手は自然とおろしてきた位置で大丈夫ですが、軽く手を合わせる時は左手を上にするといいでしょう。
歩き方
立ち姿と同様に上からまっすぐ吊られているように背筋をピンと伸ばし、小幅で膝頭を擦り合わせるよう内股にして、足をまっすぐ運ぶようにして歩きましょう。
大股や外股で歩くと裾が乱れ、ガサツな印象になってしまいます。
歩くときは、内股気味にし、上前に右手を軽く添えて裾がバサバサならないようにします。
荷物はできるだけ左手で持ち、履物を引きずったり、大きな音を立てたりしないように気をつけましょう。草履が緩かったり、きつかったりすると歩きにくいので、草履もチェックしておきましょう。
階段での上がり下がり
着物で階段を上がり下りする際に、ニョキっと脚が見えるのは避けたいものですね。
階段の登り降りの際は、裾がはだけないように裾の左前にそっと右手を添えて上前を軽く持ち、裾が大きく開かないように意識しましょう。
少し斜めに向かって上がると、綺麗な歩き姿になります。下る際は、右手で上前を少し引き上げ、体を右斜めにしながら降りると美しく見えます。
車の乗り降り
着物で車を乗り降りする時も、同様に気を配りましょう。
着物に限らず、お洋服の時にも実践したい「美しく乗る手順」です。
- シートに座り、右手でダッシュボード(後部座席に乗る場合は、助手席ヘッドレスト)を持ちます。
- 左手で上前を軽く持ち上げ、裾が乱れない様に気をつけながら、両脚をしっかり揃えて膝をくっつけます
- そのまま、シートに深く腰掛けます
- 踵つま先を地上から離し、脚をしっかり揃えたまま、くるっと90度回転し前を向きます
- ヘッドレストから手を離し、着物の乱れを整えます
これだけで、美しい「仕草美人」になります。
降りる時も同様、しっかり脚を揃えたままお尻を中心にくるりと90度回転し、脚を外に出し、降車します。「脚をしっかり揃えて膝をつけたまま」というのがポイントです。
段差に負けない「美しい着姿」を目指しましょう!
手を伸ばす時
何か物を取る時は、物を取る手の袂(たもと)に片手を添えるようにすると美しく見えます。
また、そうすることで、袂を引っ掛けてテーブルなどに触れて汚れてしまったり、物を倒してしまうことを防ぐことができます。
食事の時
食事の席では、背の高いシャンパングラスに引っ掛けてしまったり、手前にある料理に袂が触れて汚れてしまったりする事があるため注意が必要です。
普段着るお洋服には袂が無いので、袂の長さに慣れるまでは意識して動く事が重要です。
手をのばす際は、手で袂をおさえ、遠くのものは、取ってもらうようにしましょう。着物を着用する時はお洋服を着用する時以上に服を汚さないように気をつけます。大判のハンカチを二つ折りにして輪を手前に膝にかけ、もう一枚の大判のハンカチは帯に挟み込みましょう。お着物の胸元の汚れが気になる方は衿元に挟んでも良いです。
市販のナフキンクリップもありますので、こちらを使用されるとより一層おしゃれになります。テーブルとの距離は、帯とテーブルの間をこぶし1つ分空けるようにして座ります。
食事中にグラスなどを取る場合は、片方の袖口を押さえるようにすることで袂を汚してしまう心配がありません。また腕がむき出しにならず、美しい所作に見えます。
乗り物に乗った際
電車やバスなど公共の乗り物に乗る際も、袂に気をつけましょう。肘や二の腕が見えるような動作は避けたいので、立って乗車する場合は、つり革を避けて手すりにつかまりましょう。 つり革につかまると二の腕まで出てしまうことがあります。 腕がニョキっとみえてしまうと見た目が見苦しいものです。 袂に気をつけ、つかんでいない方の手を袂に添えて腕は見えないようにするのが、着物の着こなし方です。
床の物を取る時
床に置いてあるものを取る時には、左手で上前を持ち上げ、右足を半歩後ろに引いて軽くしゃがみ、右手で拾います。
座敷などでは畳に膝をついた方がスマートに見えますが、地面や床であれば着物が汚れてしまうので、膝はつかないようにしましょう。この際も、ものを取る手の袂が畳や地面につかないように片手を添えるようにします。
かがむ際には体を少し斜めにして、腰を落とすと美しく見えます。
電話をかける、電車のつり革に掴まる、タクシーを止める際に手を挙げるなどと言ったシーンは日常では意外と多いため注意が必要です。
着物は袖口が広いので、洋服を着た時と同じようにうっかり手を持ち上げてしまうと腕がむき出しなってしまうので気を付けなければなりません。このような時には、挙げた手の袖口が下がり過ぎないよう、もう片方の手を添えるようにすると美しい所作に見えます。また、挙げた腕の肘を軽く曲げるようにすると、より女性らしくおしとやかな印象になるでしょう。
しかし、着物を着ている時には出来るだけ腕は挙げないようにするのが基本です。腕を挙げる機会が多ければ多いほど着物の脇が緩み、だらしなく着崩れてしまうのでご注意下さいね。
階段の上り下り、車の乗り降りに限らず、着物を着用する際の所作ですが、着物や浴衣のときの歩き方を美しくするためにも、普段の歩き方でも意識を変えると良いでしょう。基本的なことですが、着物と洋服では動きが違います。立ち振る舞う際の動作が、着物と合っていないと着崩れてきてしまい、着物姿が美しく見えません。
着物や浴衣を着用する和装は、普段着ている洋服時と違い、動きが制限されてしまいます。普段通りの歩幅だったり、足を広げ気味に座ったり、ニョキっと腕を上げるなどといった行為をしていれば、着物は途端に着崩れてきてしまいます。
いつも通りの感覚では着崩れを招いてしまうのです。
きもので外出する際に、ぜひ用意しておきたい小物
懐紙や替え足袋。そして折り畳み傘、クリップ、紐。
着物でお出かけの際はこれらをしのばせておくと安心です。
懐紙があれば、受け皿代わりに使ったり、口元を拭いたりと様々なシーンで重宝します。
替え足袋を持っていれば、万が一足袋が汚れても、履き替えられるので安心です。
これらの小物は、懐紙入れ、懐紙挟みや足袋入れなどに入れて持参しましょう。
専用のケースも市販されていますが、これがなくても小風呂敷などを利用するとスマートです。折り畳み傘、クリップ、紐があれば、突然の雨や着崩れにも対応できるので、安心です。
写真の撮り方
カメラに向かって真っ直ぐ向くと、太って見えてしまうので、45度ほど斜めに立ちましょう。
その際、両足をやや内股して立ち、片方の足を親指ひとつ分くらい後ろに引きます。和装はまっすぐ立っていても帯の形状で体が反り返って見えてしまうため、少しだけ前に重心をかけるようにしましょう。
手はおはしょりの辺りで、すっと自然に下におろしてきた場所におきます。手の位置を少し高めにすると若々しく、少し低めにすると落ち着いた感じになります。その際、指は軽く曲げましょう。指にも表情をつける事がより美しくみえるポイントです。軽く曲げる事により、手を小さく、美しく見せる事ができます。手を合わせる場合、左手を上に、ふわっとのせましょう。