着物の基礎知識

着物の季節の装い

四季を大切にする文化の色濃い日本では、季節によって着物を着分けてきました。
そのため着物は、生地や仕立てによって着る時期が決められています。

季節に合わせて選べる、四季それぞれに適したおすすめの着物、帯の柄を簡単にご紹介します。

選ぶポイントは、着物を着る季節に合った柄のものを選ぶこと。
四季のある日本では古から季節感をとても大切にしていて、着物も季節によって生地は勿論の事、季節先取りで色や柄を変えてきました。着物の色のみならず、柄の意味を考えながら少し先取りの季節に合った着物を着こなすことで、ワンランク上の着こなしができるのです。季節より遅れてしまうと少し残念な着こなしになるのでご注意下さい。

着物や帯の柄を選ぶときには季節と着て行く場所を考えましょう。着物は1か月ほど、先取りが基本です。着物、帯は季節に合わせた色や柄のものを選ぶことで粋で、よりおしゃれに着こなすことができます。帯締めや帯揚げで演出する事もできます。
春は草木が芽吹く季節。パステルカラーやピンクなどの柔らかい色味の袷着物は春らしくてオススメです。柄は桜や藤、牡丹、桜が素敵です。
初夏には涼しさイメージさせる緑色や水色など暑さを和らげるような色味がおすすめです。季節を先取りした文様が基本ですが、夏にはあえて真逆の雪輪など冬のモチーフを取り入れて暑さを和らげる涼を演出することもあります。紫陽花や撫子、花菖蒲が代表的です。
秋は実りの季節。朱色や茶色、そして赤みの帯びた暖色系の色を選ぶと秋らしくなります。柄は紅葉や桔梗、葡萄(ぶどう)等を選ぶとより一層秋らしさが増します。冬は草木が散る寒い時期です。寒さを感じさせない華やかな色の着物を選びましょう。柄は萩、桔梗、紅葉がおすすめです。
冬は草花などの自然色が少なくなるので、落ち着いた色合いのものが馴染みます。また反対に華やかな色合いも素敵です。新年を迎えるお正月などのおめでたい席には、松竹梅や南天などの縁起物の着物がぴったりです。お祝いのシンボルの松は冬だけではなく、通年着られる柄ですが、この時期にも是非着たい柄ですね。椿、菊の柄もおすすめです。

着物は季節に合わせて、基本的に袷・単衣・薄物の3種類の着物を着分けます。
一般的な着物の着用時期はこのようになっています。

冬~春の着物

秋が深まる10月から初夏を迎える5月まで着られるのは「袷(あわせ)」の着物です。
袷とは着物の仕立て方のひとつで、胴回りや裾、袖部分に裏地をつけて仕立てたものになります。
裏地があることでしっかりとした質感が出ます。また暖かいです。
見た目にも重量感がでるため、写真映えもします。

袷着物の裾をめくったもの
袷着物

こちらの写真は、裏地の仕立てをみていただくため、袷着物の裾をめくったものです。
このように胴裏、八掛という裏をつけるため表と裏の生地が異なります。
着用時期の期間も長く一番着ていただくお着物になります。

初夏・晩夏の着物

裏地のない「単衣(ひとえ)の着物」は5月中旬〜6月、そして9月〜10月初旬くらいに着られます。(単衣は7、8月は着られません)
夏前には半衿を絽のものにするなど、気温にあわせた工夫をします。
半襟を変えたり、帯締め帯揚げもそれに合わせると良いですね。

単衣の着物
単衣の着物

こちらの写真は袷と違い、裏がついてません。その分、涼しくなります。これが単衣になります。

真夏の着物

7月から8月にかけては、涼し気な「絽、紗の着物」や浴衣がぴったり。浴衣はほかの着物よりもかなりカジュアルなので、気軽に楽しめます。おしゃれのポイントは「季節を先取り」すること。
着物そのものだけでなく、半衿や帯、小物の組み合わせで表現の幅が広がります。
季節の装いのルールを知った上で、着物ライフを愉しみましょう。

絽(ろ)

正装着フォーマルにも使われる、夏着物の生地で格上のお着物です。横、もしくは縦に段のような隙間を作りながら織り上げた手法。着物以外にも帯や半衿にも用いられています。

経絽(たてろ)

緯糸に経糸をからめるのではなく、経糸に緯糸をからめた手法。縦方向に隙間ができます。

平絽(ひらろ)

撚りのかかっていない平糸で作った絽。柔らかな手触りとなり、艶やかな光沢があります。

駒絽(こまろ)

強い撚りのかかった駒糸で作った絽。平絽などと比べてシャキッとした地風にサラッとした肌触り。涼しく夏の代表でもある駒絽。

紗(しゃ)

絽よりもカジュアルに近い。絽よりも透け感が強く、綟り織で織られた、薄く透き通る絹織物。横糸を1本ずつ取ったうえで、強撚糸の縦糸を2本ずつ絡ませて織り上げたもので、生糸で織り上げることが多く、メッシュのように全体に等間隔で隙間を空けて織られています。

紗は、絽ほど一般的には知られてはいませんが、着物だけでなく、ちりよけとして人気の平織りと組み合わせて柄を作り地模様を織り出した文紗、その他駒糸で作った駒紗、平糸で作った平紗があります。さらに二重紗と呼ばれる、二重組織になっていて表と裏の織りが違っており、複雑な構造で1枚になっているものもあります。こちらは二重構造で厚みがあるため5月下旬の1週間のみともいわれています。個人的には、本来の着る時期を理解した上で、先取りで5月、6月、単衣時期9月。屋内のパーティなら7月、8月着用可能だと感じます。

二重紗 = 紗合わせ、 紗袷せは、絽と紗の二重の着物で訪問着が一般的
二重紗 = 風通織(二重織)、風通織は裏と表色がが違う二重織の紗

羅(ら)

紗や絽は2本の経糸が緯糸に絡み合うのに対し、羅は経糸が連続して交差し、そこに緯糸が真っ直ぐ通る手法。羅の為の織り機で作ります。特殊な技法の為、生産減少しています。

経糸全て絡み合うので、全体に非常に透け感が強く、しっかりと織り込まれるため、透け感があっても撚れたり撓ったりすることはありません。糸が斜めに入ってバイアス地を形成するため、捻れにも強いものです。

麻(あさ)

小千谷縮や上布等で有名な夏物。麻の繊維で、とても丈夫です。さらっとした着心地で、ベタつかず、お手入れも簡単なので、普段使いに向いています。

紗、絽、羅ともに、絡み織りの織物。それぞれ着用時の透け感が異なります。絽のほうが格が上で、結婚式やお茶席などの改まった場に着ていくことも出来ます。紗はセミフォーマルからカジュアルまで着られます。羅は透け感があり過ぎるため、着物でなく、帯で見ることが多く、帯は紬や麻の着物によく合い、涼やかな印象です。

夏着物を着たら…

袋帯や名古屋帯も絽や紗、羅など夏仕様に。

長襦袢

家で洗濯でき、通気性がよく汗を吸ってくれる麻などがおすすめです。半襟は、絽や麻などで。

帯締め・帯揚げ

夏着物に合わる小物。透け感のある帯締め帯揚げ。涼しげな色を用いてもいいです。

肌着

普段お使いの物でもよいですが、家で洗えて汗を吸い取る速乾性・通気性の物だと快適に過ごせます。

足袋

一般的な物は一年中使えますが、麻素材の足袋やレース素材でできた涼しげでお洒落なものもあります。

着付小物

こちらも一年中使えますが、帯枕・帯板・伊達締めなどの体と触れる面が広い小物などはメッシュやへちまをつかった通気性に優れ、汗を吸ってくれるものも市販されています。

履物

パナマ、麻素材を使った夏向きの草履や下駄がおすすめです。


おしゃれのポイントは「季節を先取り」すること。
着物そのものだけでなく、半衿や帯、小物の組み合わせで表現の幅が広がります。

季節の装いのルールを知った上で、着物ライフを愉しみましょう。

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